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オペラ「インテルメッツォ」に寄せて(2004.6.3)
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オペラ「インテルメッツォ」に寄せて(2004.6.3)

7月に出演予定のR.シュトラウスのオペラ「インテルメッツォ」では、指揮者、ロベルト・シュトルヒの妻であるクリスティーネを演ずる事になっていて、目下立ち稽古を前に暗譜の日々です。

詳しい内容の説明はさておき、とにかく、この曲は通常のオペラと大きく異なり、メロディーがほとんど存在しないのです。音楽に乗ってはいるけれど日常の「会話」をそのままオペラにしてしまったというもので、とにかく私たちドイツ語をネイティヴにしない者にとっては、大変に苦労を要する作品といえます。実際この役に取り掛かって約2ヶ月というと、ほんとに苦しい日々でした。とにかく、早口、語気が強く、ころころと拍子やテンポも変わる。おまけに何と言ってもリヒャルト・シュトラウスの一番の特徴である転調が一小節に何個もあったりする…。
普段決して早口でおしゃべりではないこの私がほんとに歌えるの〜?という不安にかられながら、ひたすら練習の日々。最近は朝起きるともう頭の中でこの音楽とテキストが鳴っているというところまでくる事ができました。ふぅ〜。ようやく3合目あたりまで来る事ができたという感じです。

このオペラはある指揮者を夫とする夫婦をめぐるたあいのない内容です。この夫役はまさしくリヒャルト・シュトラウス本人、夫人は彼の奥さんであるパウリーネをモデルに描かれており、自分の家庭の中を他人に見せるという意味では、シュトラウスの嗜好を疑ってしまいますが、先日シュトラウスと脚本家ホーフマンスタールとの手紙のやり取りをまとめたものを見ていた際にこのオペラについてシュトラウスがこう書いていたのを見つけました。

「この作品を思いついたきっかけは、ごく無邪気な他意のないものでしたが、ここで語られ行われているのは、結局のところ人間の心を動かす最も難しい魂の葛藤なのです。」

私なりにこの言葉の意味する事を作品を一通り見て考えた所、オペラの最後の最後にある妻の言葉、
Wo bliebe mein stolz,meine selbstachtung
(私のプライド、自分への敬意はどこにあるの?)
という箇所に、シュトラウスの意図していることが隠されているように思っています。
プライドというと、日本ではネガティヴな意味に捉えられがちですが人間が生きていく上で、その人の生き方に大きく影響を及ぼすものです。それは、社会に生きるという意味においてもそうですが、その極小の単位である家庭の中、夫婦というものを成立させるのにも大変重要なものだと思います。 われわれがこの世で生きていく為、自分が自分として立っていくための大切な支えとしてのプライド、それが人と人生を共有する際にはお互いを認め合える事で確保する事ができるということ。そんな事を教えてくれているような気がします。

クリスティーネについては、とにかく気分屋で、自分以外のことには耳も貸さない、奔放で人を振り回す、私にはこんな人でいられたら楽だろうにと思わせる、女性から見るとあまり好きになれないタイプの女性像です。
これから、演じるという事になっていきますが、この、とんでもない人にどれくらい近づけるかを目標に(結局“地でいけたじゃな〜い“なんて言われたりして?!)、そして、せっかく演じるのですからこの人を、憎めないどこか魅力のある人にできたらなぁと思っています。

皆さんに楽しんでいただけるよう、精一杯頑張ります!


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